不況は回復しない

去年も日本の社会や世界の情勢は厳しい状況が続いていました。 今年もさらに厳しい状況が続きそうです。 日本もこの不況がいつ終わりいつ景気が回復するのかといろいろ言われています。 いろいろ意見がありますが、私もしばらくは景気は回復しないと思います。 この不況の大きな原因のひとつは需給ギャップで、供給が需要を上回っているので、構造改革がなされて新しい需要創造が出来ない限り回復されないと言われています。 モノは飽和状態になっていて、人はもう単にモノではあまり幸福感を感じなくなっているのではないかと思います。 心が満たされていく良質なサービスを求めてきているのではないかと思います。


世界の情勢も今年はもうすぐイラクの戦争が始まりそうな情勢ですし、北朝鮮の状況も緊張が高まってきています。 一昨年のアメリカのテロ以降、バリやロシアでのテロなど新しい戦争としてのテロが世界各地に広まって行こうとしています。 ヨーロッパや日本でもテロが起きる可能性は充分にあります。 テロは予想しない所で起こすのが有効なのですから。 こうした状況は人間が変わらない限り変わらないと思います。 人の考えや気持ちが変わらなければ、いくら力で抑えたり仕組みを変えて行ってもだめだと思います。 「宗教」や「民族」が対立の要因とか言われたりしますが、宗教そのものには問題がなく、いろいろな宗教が共存している社会は多くあります。 「宗教」を対立に利用しようとする人がいる事が問題なのです。 「民族」も他の集団から差別される事から「民族意識」が高まってくるのです。 盲信せず自分で考え、他を差別せず、違いを受け入れていく事が大事です。 又貧富の問題についても、今は経済の社会ですが、人間が資本の論理や経済の仕組みに合わせるのではなく、経済が人間の幸福や成長に寄与する社会にしていく事が大事だと思います。

今の社会は乾いていると思います。 人の「情」が枯れてきているのではないかと思います。 花を愛するのに植物学は必要ないのです。 もっと花を美しいと思う心や感性を育てて行く必要があると思います。 この絵が誰の作品で何派の影響を受けているかなどではなく、ただ好きな絵の前で感動し立ち尽くす自分を育てて行きたいと思います。 本や映画を見て感動して目を潤ませる自分が好きです。 もっと感動して泣きたいと思います。

新しい正義

「競争」ではなく「共生」して行きたい。 「効率性」よりも「人間性」を重視して行きたい。 「どちらが得か」ではなく「どちらが善いか」で判断して行きたい。 イラクや朝鮮の問題でも、「悪意」に対しては勿論毅然とした態度が必要だと思うのでどうしたらいいかは一概には言えないのですが、厳しい対応をせざるを得ないとしても心の底の方でイスラムの人たちや朝鮮の人たちの痛みや哀しみを感じていたいと思うのです。 みな正義のための戦いと言いますが、正義とは何なのでしょうか? 正義という言葉の背後にある「想い」が重要だと思うのです。 少なくとも自分たちの「利益や生活」を守るために「正義」を掲げたくはないのです。 どちらが「白」か「黒」かという正義では争いや対立を解消出来ないと思います。 私は新しい正義として「人間の尊厳」を第一に掲げていきたいと思います。 人間の尊厳に基づいた「自主・自由、美しさと喜び」を掲げて行きたいと思います。

右手で右手は磨けない

右手で右手は洗えません。 右手を洗うには左手が必要なのです。 左手も又然りです。 夫婦の間では妻が魅力的な女性かどうか、夫がかっこいいかどうかは配偶者の責任なのだそうです。 自分は自分ひとりでは磨けません。 相手によって磨かれているのです。 自分がそこそこ「いい線」行っているとしたらそれはパートナーのおかげだし、相手がますます魅力的になってきたら自分もなかなかだなと誇りを持っていいと思います。 これは仕事や友人の関係でも同じです。 自分が何とか会社を経営していられるのは社員のおかげだし、人生を楽しく生きていられるのは友人達のおかげだと思います。 そう思うと人間関係で悩む事はほとんどなくなりますし、自分も楽に成長して行けます。 「感謝」とは自分を成長させていくとても大きな力があるのだなと思います。 又この考えは今の「対立」した社会構造から「共生」の社会に移行していくのに大変有効な考えだと思います。 人は自分一人では生きていけません。 「人は生かされているのだ」と本当にそう思います。

アクノリッジメント

新しい時代の新しい社会には新しいリーダー達が必要です。 ドラッカーがリーダーの最大の仕事は人のやる気を引き出すことだと言っていますが、鈴木義幸さんというコーチングのプロの人が「どうしたら人は動くのか」という問いかけに対する唯一の答えはアクノリッジメント(相手の存在を認めること、承認すること)だと言っています。 人は他人に説得されるのでは無く、自分でそう思う時、自ら動きだします。 人は自分の存在が認められると自己説得が引き出されるそうです。 それを引き出すエネルギー、「私はあなたの存在を認めているよ」ということを伝える全ての行為、言葉などがアクノリッジメントと言うのだそうです。


アクノリッジメントの代表選手に「誉める」と言う行為があります。 「誉める」と言うのは人間関係を良くするために「すごい」とか「素晴らしい」とか単に美辞麗句を投げかけることではありません。 相手が心の底で他人から言って欲しい事を言葉で伝えることです。 人によってそれは違ってきますから常に相手への関心を持っていないと本当に誉めることは出来ません。 「下手に誉めると相手がつけ上がるだけだ。」と思っている人は相手の良さによって自分が磨かれているということを知らない人です。 人を誉めることが出来ると自分も元気になってきます。 世の中は自分が発信したものが自分に帰ってくるようになっているのですから。 相手が言って欲しいと思うことは言ってあげたいと思うと同時に、相手が言いたくない事は無理に聞かないし、相手が聞いて欲しい事は自慢話でも沢山聞いてあげられるようになりたいと思います。 たとえ表現が的を得ていないとしても、人は自分に対するいい評価を聞くことによって少しは元気が出ます。 あるベテラン女優は舞台に上がる前に舞台の袖でお付きの人にこう声をかけてもらっているそうです。 「先生は日本一の女優さんですね!」。 その言葉の響きが耳に残っているうちに舞台に踏み出して行くそうです。


今は一人の卓越したリーダーが必要と言うより、一人一人がそれぞれの分野でリーダーとなり、相互に連携し合い統合されていく組織や社会が必要だと思います。 全員がリーダーとしての意識が必要だと思います。 人は他人から何かをされるのを待っている人と、他人の為に何かをしようとする人がいます。まずは自分から門を叩くことが大事です。

「すいません。探しものをしているんですけど」
「何を?」
「あなたと話すキッカケ」  (中谷彰宏)

どぶの中の星

リーダーとして人をマネージメントして行くのに、「アメ」と「ムチ」を上手く使い分けたり、「仏」になるのか「鬼」になるのかと言った議論はもう不要だと思います。 根底にある相手への信頼や愛情が大事だと思います。 上手くやろうと努力するより、自分の心の深い所で感じている想いに沿って素直に自然にやろうと努力する事の方が大事だと思います。 より深い考えや意識を身に付けながら、現実的な行動にはバランスが大事だと思います。 自分の夢や目標に対しては「少年よ大志を抱け!」というような大きな夢を持つことも必要ですし、いつも上手く行かない人は「高度な目標に何度も失敗するより、適度な目標を何度も達成しよう!」と言う考えも必要だと思います。 たるんでいる時は「思いっきり頑張る」事が必要ですし、疲れきっている、擦り切れている時は「頑張らない!頑張らない!」と自分をリラックスさせることが必要です。 勝負している時は「勝つ」ことに執着する事によって学ぶものが多いし、結果として「負けた」時はそこから又多くを得る事が出来るのです。 そうしながら勝ち負けを超えたものを掴んでいくのです。


「星を見てどぶ板を踏み外す者がいる。どぶ板を踏み外さないように星も見ず下ばかり見て生きている者がいる。」 私は家族や社員を食べさせて行く為にはたとえどぶの中に落ちている金でも拾いながら、でも空を見上げ星の美しさに感動しながら夢を語っていたいと思います。

信念と情熱

今、時代や社会は人財を求めています。 新しい時代や新しい社会を見据えて、そこに導いて行ってくれる新しいリーダーを求めています。 仕事でも、勿論任された業務を遂行するに充分な技術や能力は必要ですが、この人に任せれば安心と言う「人として信頼できる人物」が求められています。 人生では勝ったり負けたり、波は必ずあります。 この波のステージを常に上げていく事が大事です。 経営でも「会社を作るのは誰でも出来るが続けることが難しい」と言われています。 人は儲かる話や成功した話を聞きたがるが、それよりも失敗した人の話を聞いて、いつでもその為の対策をしておく事が大事だと言う話を聞きました。 儲けることはそう難しい事ではない、ツキや流れが来る時があってその時は黙っていても儲かるそうです。 ただツキのない時、流れがこないときに潰れていくそうです。 上手く行っているときに自分の実力だと思って慢心し、次の手を打っていかないから潰れていくのです。 今は時代の転換期ですから、運・不運や状況の激変など、波は大きく襲ってきます。 自分のポリシーや哲学を持っていないと、波に翻弄されてしまいます。 そしてその自分のビジョンに対する強い情熱が必要です。 私は今迄の経済中心の企業のあり方には魅力を感じていません。 安易なリストラなどはする気はありません。「経済至上主義」ではなく「人間至上主義」で社員一人一人が自分を成長させ、仕事の中に喜びを見出し、社会や人の為に役立っていけるような企業を作って行きたいと思います。 環境は厳しいですが、だからやりがいがあるし、面白いと思っています。


「信念」と「情熱」は人の能力の中で、今だ有効に利用されていない、物事を成し遂げていく為の最も強力なパワーです。 強い気持ちを持ってわれわれの目指す企業を皆で作って行きたいと思います。


君が出来るすべての善を行え
君が出来るすべての手段で
君が出来るすべての方法で
君が出来るすべての場所で
君が出来るすべての時に
君が出来るすべての人に
君の出来る限り        (ジョン・ウエズリー)

平成15年1月6日

株式会社エスピック 代表取締役社長・島 至