「こころ」の時代

去年も年末にかけて、姉歯氏を中心とした耐震強度偽装事件が世間を騒がせていました。 毎年のように大手企業の不祥事が明るみに出て、何十年もかけて積み上げてきた信用や実績を一夜にして崩壊させていく事件が後を絶ちません。 いくらバレずにうまくいったとしても不正を続けていたらいつか必ず明るみに出て、それまで得た利益の何倍ものモノを失うのは世の中の最も基本的な原理です。 昔は絶対潰れそうに無い一流と言われている企業が、ここ数年は利益を追求するあまり、そんなちょっとした舵取りのミスであっと言う間に崩壊していく現象が顕著になってきています。 昔は「まあ、しょうがないか?」と見逃していた不正も、今は「もう、見逃さないぞ!」と社会の意識が変わってきているのだと思います。 企業も売上だ、利益だという経済力だけでは磐石ではなくなってきています。 今、企業のコンプライアンスが盛んに叫ばれていますが、高いモラルの企業文化が創られていなければ、いくらセキュリティを強化していってもいたちごっこのように社内のどこかで不祥事が発生すると思います。 今は企業のあり方や仕事の意義を問い直されているのだと思います。 そんな時代が求めている新しい社会とはどんな社会なのか?我々が目指すべき新しい企業像とはどんな企業なのか?ということを考えてみたいと思います。


昔、ピータードラッガーが社会や世界を支配している力が「武力」から「経済力」、そして今は「知力」だと言っていましたが、私はこれからは「こころ」の力が必要な時代になるのではないかと思います。 心が良くて強い人がリーダーとして求められているし、心のある企業がこれからは成長発展していくのではないかと思います。 心が乾いた社会ではなく、潤いがあり、心に染み渡って癒されたり、感動したりするような想いや行動が求められているのではないかと思います。 企業も「経済活動」というより「人間活動」として何の為に、何を目指しているのかと言うことが大事になってきているのだと思います。 人を大事にして、人が中心になる新しい社会が求められているのだと思います。

インテリジェントデザイン

今、アメリカで私が注目している裁判があります。 人間はダーウィンの進化論により適者生存や弱肉強食などの要因で霊長類から進化したと言う説が通説になっていますが、どうも人間は他の動物とは進化が違っているのではないかと言う説が出ています。 適者生存の原理からすると人の骨や筋肉は霊長類と比較しても著しく弱いし、洋服を着ていないと生きていけない動物は人間ぐらいで、性や脳も他の動物と比較すると明らかに違っている。 そこで今、第一線の科学者の間で注目を浴びているのが「インテリジェント・デザイン・セオリー」という説で、これは創造主と呼ばれる知的存在が宇宙と全てのものをデザインしたとする考え方です。 ですから自然現象はもとより社会や人生にもこの創造主の意志が働いていて、この創造主の意志を学べば、人生や社会も良くなっていくわけです。 裁判では学校の教科書にダーウィンの進化論ではなくこのインテリジェントデザインを載せる、又は併記するべきだと言うことで地域住民が教育委員会に裁判を起こしていて、この1月に第一回の結審が出るという話で注目を浴びています。 「神」の存在を裁判で争うなんて、いかにもアメリカ的で面白いなと思っています。 今までの科学万能の社会風潮にちょっとした風穴を空ける様で、これからの「心の時代」における「こころ」を考えていくにはこういった考えも取り込んでいく必要があると思うので、面白い裁判だと個人的には注目しています。 宗教界も納得できる考えで、今まで反目しあっていた宗教と科学の融合にも繋がっていくことだと思います。

アセンション(上昇)

「生まれ変わり」に関する説も最近は研究が進んできていて、いわゆる「あの世」がどういう所だということもいろいろな本に書かれています。 本当かどうかという点についてはまだ万人が納得できるほど説明がついていないと思いますが、何の為に生まれてきたのか?生きる意味や人生の目的を考える意味では非常に参考になります。 死に対する恐怖も安らぎますし、生き甲斐の創造にも役立ちます。


こういった研究が盛んになり、人が生きる意味や人生の目的について目覚めていくと、人の意識がワンランク上がって「アセンション」という現象が起きます。 これは人類全体の意識が上昇して、エゴや憎しみなどを克服して人としてワンランク上がった状態になることを言います。 私は戦争や争いなどは人の意識が向上してエゴや欲、怒りや憎しみといった感情を克服していかないとなくならないと思っていますので、生命を含めた宇宙の仕組みや人生の意味などを学校の教育のレベルから考えさせたりして、集団的な人間の意識の向上が図れれば「アセンション」といった人類全体の意識の変革によって、戦争などが無くなって住みやすい社会が出来るのかもしれないと思っています。 一部の人は近未来に起きるだろうと言っていますが、私はもう少し世界を覆う貧困が克服されてきて、教育が世界に行き渡っていかないと難しいと思うので時間がかかると思っていますが、未来に希望の持てる説だなと思います。 人類全体では時間がかかると思いますが、エスピックのような小さな組織に小さなアセンションが起きると面白いし、素敵なことだなと思います。

直感を磨く

個人情報保護法が去年4月に施行されてから半年以上が経ちますが、過剰反応による不信感や違和感から息苦しさを感じるなどの世論調査が出てきています。 過剰保護の例として「役所が緊急時に助けの必要な一人暮らしの老人の情報を民生委員に教えない」(おかしいと思う:84%)、「病院で緊急入院した人の名前などの情報を教えない:(同:78%)、「学校が緊急連絡網を廃止した」(同:75%)などがあります。 個人の利益の保護か社会の公益かという議論はいつの時代にもありました。 どちらが優先されるべきかという問題ではなく、健全な社会の中でこそ、個人が尊重されていくわけで、両立と言うか一体のものだという認識が必要なのだと思います。 個人の過剰防衛によって匿名社会が進んでいくと、余計不安感や疎外感が増長されてくると思います。


コンピューターの発達によって社会が複雑にシステム化されブラックボックスになっている部分が増えてきています。 先の耐震偽造事件もそうですが、プログラム化されているところがブラックボックスになっていて、プロでもちょっと見ただけではわからなくなってきている部分が多くなってきています。 私も昔、旅行でヨーロッパを車で周っていた頃はポンコツの中古を買ったおかげで毎日のようにボンネットを開けて、プラグを磨いたりしていました。 今の車はほとんどがコンピューター制御されていて、ボンネットを開けることはほとんど無く、街の整備工の人は仕事がなくなってきたのではないかと思います。


こういった高度にシステム化されていった社会の中だからこそ、人の直感というものが重要になってきているのではないかと思います。 人の能力は素晴らしく、何だかわからないけど、何かがおかしいと気づく力を持っています。 この「何だかおかしいぞ!」、「こうあるべきなのではないか!」といった直感(=感性)を磨いていく必要があるのだと思います。 そのためには「如何に生きるべきか?」「どうあるべきか?」といった基本的な自分の生き方の柱となる部分を磨いていくことが必要だと思います。 社会の効率化やシステム化が進んで行く中だからこそ、正しい判断をするためにはこの「直感」を磨いていくことがより重要になってくるのだと思います。

会社が成長していくための条件

「会社が成長していくための一番の条件とは何か?」という質問にハワード・ゴールドマンという人がこう答えています。 「そうだね、雰囲気が良いということかな」。 会社の雰囲気が良いということは社内の人間関係が良いということだと思います。 人間関係が良いということはコミュニケーションが良いということで、特に言葉が持つ力はとても大きいと私は思います。 良い言葉を使っていると周囲の雰囲気も良くなるし、自分の心も変わってきます。 言葉が周囲の雰囲気を作り、世界を作っている。だから言葉を変えると世界も変わってくるのです。 僕が好きな言葉は「ありがとう」と「愛している」です。 「ありがとう」という言葉は自分の心も相手の心も暖かくしてその場の雰囲気を格段に良くしていきます。 「愛している」はまだなかなか外に出して使ってはいませんが、自分の心の中ではしょっちゅう言っています。 自分の心を相手に真っ直ぐ向けていく言葉で、素敵な気持ちにするだけでなく、自分に力や勇気を与えてくれる言葉です。 愛は求める心ではなく、受け入れる心です。 「愛」という字は「心を受けとめる」と書きます。 自分の気持ちを貫く事より、相手の気持ちを受け止める事の方が私は大事だと思います。 社会的に何かをする時には必ず相手がいます。 相手の気持ちを受け止めるからこそ、自分の想いが実現されてくるのです。 自分の想いばかりを実現しようとすると、色々な壁が出てきてなかなか前に進めなくなってきます。 相手を受け入れるからこそ前に道が開けてくるのです。


それと会話は常に未来を語るといいと思います。 「君はここがだめだ」という現在語より「君はこうしたらもっと良くなる」という未来語を使うのです。 人は完璧じゃないから今を語ると弱いところやダメな所が出てきます。未来を語っていけば常に明るい夢を語っていくことが出来るのです。

人生における成功とは

去年はM&Aとか敵対的買収とかで企業の統合が盛んに行われました。 でも敵対的買収というのは「こころの時代」には合っていない気がします。 ルール的には今の資本の社会には何の問題もないのでしょうけど、そういうことが進んでいくのは社会が求めている方向とは違う気がします。 今、世間を賑わしている一部のIT企業や何とかファンドも10年後20年後にはどうなっているか危うさを感じています。 「知力」的にはすごいとは思いますが、素敵だなと心に響かないのです。 「資本の論理」はもう時代に合わなくなってきていると思いますし、唯一残っていると言われている「資本主義」もすでに崩壊の方向に進んでいると思っています。 新しい時代に合った新しい「主義」が必要になっているのではないかと思います。 私はそれは人が社会の資本となる「人本主義」のようなものではないかと思っています。 私はもし思っていた以上に事業がうまくいって余裕のあるお金が出来たら、何十億もかけて宇宙ステーションで食事をするより、貧しい国に病院や学校を建てたほうがよっぽど夢を感じます。


エスピックを一人一人が自分を磨き素敵な人の集まる企業にしていきたいと思います。 「磨く」ということは無数の傷を付けるということです。 仕事を通じいろいろ厳しい状況を乗り越えて自分を磨いていくのです。 人生でいろいろなことが起きるのは、その人に何かを気づかせるために起きるのです。 それが解かって自分を変えると同じ事は起きません。 自分の心が素敵になっていけば素敵な事しか起こらなくなっていきます。

 


人生における成功とはどれだけお金を稼いだかとかどのぐらい偉くなったかとは関係ありません。 人生における成功とは「いかに幸せに生きたか?どれだけ人を愛し、人から愛されたか?」で決まると思います。 私はエスピックを一人一人が仕事を愛し、会社を愛し、一緒に働く仲間を愛しながら、自分の夢を実現していける会社にしていきたいと思います。 エスピックを「こころの時代」にふさわしい心のある企業にしていきたいのです。 「一人で見る夢は夢でしかないが、皆で見る夢は現実である」(オノヨーコ)。 今年もみんなでエスピックをますます素敵な企業にしていきましょう。

平成18年1月5日

株式会社エスピック 代表取締役社長・島 至