違いを受け入れるところから出発する

昨年はオリンピックでの日本人選手の活躍や山中教授のノーベル賞の受賞など嬉しいニュースも多くありましたが、ビジネス環境としては円高や尖閣諸島・竹島問題に端を発した日中、日韓の摩擦による経済の悪影響など、長引く景気低迷で厳しい環境にありました。年末の選挙で自民党が大勝したことによって、今年は少しは景気が上向くのではないかとの期待感が出ています。


尖閣諸島の問題で中国で反日運動が起きて、日中間がかってないほどに悪化したことは憂うべき問題です。中国で対日感情が悪化してきていますが、日本でも中国に親近感を持てないという人が増えてきています。年末年始の中国旅行は対前年85%も減ったそうです。尖閣諸島がどちらに領有権があるかは根拠の持ち出し方によって、それぞれ主張があるのは理解が出来るところです。要はその主張の仕方だと思います。力で押すところに嫌悪感が増しているのだと思います。日本企業を襲ったり、他国の国旗を燃やしたりという行為は、理由はどうあれ人として恥ずべき行為だと思います。日本人が対抗して過激な行動を取らないことは安心もするし、日本人の資質について少なからず誇りも感じます。事実の解釈の違いや意見の相違は当たり前です。その主張の仕方、表現の仕方でいろいろな状況を作っていくのだと思います。このグローバルな時代、地球規模でみればいろいろな価値観、文化、民族や宗教があるのが当たり前です。それらの違いを認め受け入れるところから出発しなければ何も前に進めないと思います。私はこの尖閣諸島や竹島問題をどう解決していくかが、新しい世界を築いていけるかどうかの試金石となると思っています。私は原則的には尖閣諸島はどちらのものでもない。地球の資源なのだから原則的には私達皆の、地球人のものだと思います。勿論現実の対応は状況や相手によって変わってくると思いますが、まずその原則、基本となる軸をしっかり持って現実の対処を考えていくべきだと思います。

私達一人ひとりの周りから共生の社会を目指す

昨年は各国のリーダー達が変わる選挙の年ということもあって、国内向けのアピールの為の要素も大きかったのではないかと思います。我が国を取り巻くアメリカ、ロシア、中国、韓国、そして日本のリーダーが皆変わりました(アメリカは再選)。選挙はしばらくないのでここ数年は対外的な摩擦は避けて、実質的な成果を志向するのではないかと思います。そして今こそ共生の社会の理念が世界に必要なのではないかと思います。各国のリーダー達には対外的な国家間の摩擦を経験したからこそ、それを糧にボーダーレスな新しい社会の実現に確固たる意思と行動をとってもらいたいと思います。


勿論リーダー達だけに任せてはおけません。坂本竜馬という一介の脱藩浪士が明治維新という偉業を成し遂げるとことが出来たのは、当時の藩やお家第一という武家社会の中でその枠を取り払って“日本”という概念を掲げたことが皆の共感を呼んだのだと思っています。一浪人だったということも逆に良かったと思います。高杉新作や西郷隆盛も傑出した人物だと思っていますが、彼らには背負っている“藩”の存在が重かったのではないかと思います。世界のリーダー達も背負っているものが大きいと思います。一市民、一企業の方が自由に行動が出来て、理念を世界に広めていけるのかもしれません。特に経済の世界ではすでに国というボーダーはもうなくなってきていると思うので、私達こそが共生の社会の実現を担っていく主役となっていくべきだと思います。

天才とは量から生まれる

「成功するためのコツは2つある」。その2つのコツとは「コツ、コツ」という話は好きです。大切なことを面白く表現しているので、強く印象に残っています。何かを極めるのは継続以外にはありません。小さな事を積み上げていくことがとんでもないところへ行くただ一つの道なのです。天才とは“量”から生まれるのです。量によって質の変化が生じるのです。天才とは天から授けられた才能を発揮出来ている人の事を言います。だから誰でも天才になれます。天から授けられた才能を充分に発揮するのには量が必要なのです。その量から新しいひらめきが生まれ、質の変化が生まれ、他の追随を許さない独特の世界が出来てくるのです。エジソンの「天才とは1%のひらめきと99%の努力の賜物である」という言葉は有名ですが、これは努力の大切さを言っているわけではありません。それは誤った解釈です。あくまでも1%のひらめきが大切で、その為には膨大な努力が必要なのだと言っているのです。エジソンもものすごい量の実験をしていたし、イチローも小さい頃からものすごい量の練習をしている。ピカソもすごい量の絵を描いているのです。そこから気づきが生まれ、ひらめきがあって天才と言われるような独特の世界が生まれてきたのです。


何度もミリオンセラーの曲を生み出しているミュージシャンの話ですが、ヒット曲というのは創るのにあまり時間がかからなかったものが多いそうです。ミリオンセラーになる曲は5分くらいでサラサラと書いて出来たものが多いそうです。いい曲にしようと何度も書き直したり、工夫を凝らして創った曲は、自分としてはこれだけやったのだからヒット間違いなしと思うのですが、そういう曲というのは意外に売れないことが多いそうです。このサラサラと書いてミリオンセラーになるところだけを見ていると天才のように見えますが、その背景には膨大な量があるのです。余談ではありますが、ニューヨークを旅行中の旅行者が交通整理をしている警官にカーネギーホールへの道を尋ねたところ、その警官は「それは練習、練習、さらに練習だ」と答えたという笑い話があります。

最高の雑用係になる

自分からはカーネギーホールには立てないのです。人に認められなければだめなのです。ある歌のうまい歌手がいます。彼女は酒場で歌っていますが、お客さんは酒を飲んでおしゃべりをしていて誰ひとり彼女の歌を聴いてくれている人がいません。そこで腐って歌うのを辞めてしまえばそこまでです。それでも一生懸命歌っていると誰かが見染めて次の舞台に連れて行ってくれるのです。そこでも又一生懸命歌っているともっと大きな舞台に連れて行ってくれる人が出てきます。そうやって最後はカーネギーホールで歌っているかもしれないのです。


今の立場、状況で常に最善を尽くすのがステップアップしていく最善の道なのです。それは「今・ここ」が天から与えられた自分の使命を果たす場であるからです。「もしあなたが雑用係を命じられたなら、誰にも真似のできない最高の雑用係になりなさい。そうすれば誰もあなたを雑用係のままにはさせてはおかない。」もっとも雑用というのはないそうで、用事を雑にこなすから雑用になるのだそうです。どんな仕事でも等しく価値と意味をもっているのです。

天命追求型

人生の生き方として目標追求型とは別に天命追求型というのがあるようです。天命追求型というのは将来の目標に縛られることなく、今自分の置かれた環境と立場で全力を尽くしていく生き方です。そうしていると天命に導かれて予想もしない高みに到達するというものです。戦国時代の武将で言うと秀吉が天命追求型であると言われています。信長や家康は殿様の息子だったから、もともと天下取りという目標がありました。ただ秀吉は百姓の倅であって、当時の時代背景からは侍になることも夢としては持てなかった時代です。ただ信長を喜ばせたい一心で与えられたことに最善を尽くしていたら、自分では想像もしなかった天下を治めると言う高みに達したのです。ビジネスの世界では西欧では目標追求型が多いのですが、日本人の気質や日本の風土の中では天命追求型の方が合っているのではないかと言われています。何気ない日常の中にある日々の事を大切にして一生懸命やっていくことが、日本人には好感を持たれて、日本の社会の中では成功していくと言われています。そして目標追求型は目標を達成するまでですが、天命追求型は自分では思いもかけない高みまで登っていく事が出来るようです。勿論、私は目標も大切だと思っています。ただそれは自分の欲望を満たすような目標ではなく、自分の使命を果たす為の“道標”のようなものだと思っています。


“自分は成功したい”というのはどうも他の人の共感を得られないし、協力もあまり得られないものです。人は一人では何も出来ない。他人の力や社会や自然、宇宙の力さえも借りなければ自分だけでは何も出来ないものです。ならばその置かれた立場、状況が天命なのだから、それに最善を尽くしてあとは天にお任せにして、その流れの中で生きて行くのが天命に導かれながら高みに登っていく最善の道なのだと思います。

リーダーシップとは皆のことを思う心

リーダーシップというのは組織の長とか権力者に存在するものではありません。リーダーシップとは一言で言うと「皆のことを思う心」の事ではないかと思うのです。「自分にとって何がいいか」ではなく、「皆にとって何がいいか」と考える意識だと思います。リーダーの為に部下がいるのではなく、部下の為にリーダーがいるのです。こんな話があります。勝海舟が博徒の親分である次郎長に「お前の為に命を捨てる子分は何人おるかえ?」それに対し次郎長は「一人もおりません。ですがわっちはあやつらの為にいつでも命を投げ出す覚悟がありやす。」これがリーダーとしての心構えだと思うのです。皆の事を思い、皆の為に力を尽くしていると、それが何倍にもなって自分に帰ってきて、どんどん自分も楽になってくるし、周りの人達からひとつづつ上のステージに押し上げられていくのだと思うのです。リーダーに必要な資質はいろいろありますが、一つだけ選べと言われれば、それは「皆に好かれること」だと思います。そしてそれは「皆の事を思う心」から生まれてくるのです。

インサイドアウトでプロを目指す

皆の事を思う心はホスピタリティに現れてきます。帝国ホテルのバーテンダーは一杯目と二杯目のグラスの置く位置は違うそうです。一杯目は取りやすい右斜め前に置きますが、二杯目はお客様が自分で移動した一杯目のグラスの位置を覚えておいて、そこに置くそうです。そんな小さなことに観察眼をもって実行していくことが一流のプロとしての証となっていくのだと思います。自分の周りにもそんな場面がたくさんあると思うので、小さなことから少しずつ行動してステップアップしていきたいと思います。


プロはプロ(PRO)でなければならない。このPROとは次の言葉の頭文字のことです。PはPositive:積極性、前向きの事で、どんな状況でも常に明るく前向きに考えられる事。RはResponsibility: 責任感が強い事で、どんなことも決して相手や周囲のせいにしない。全ての事を自分の責任と捉える心を持っている事。OはObjective: 直訳は目的、目標ですが、意味としては結果志向のことです。結果が出せなければプロとは言えません。常に結果を出すやり方、考え方を志向していくことです。


相手が、社会が、状況が変わって欲しいと思っても変わりません。自分の内側を変えていくしか成長はないのです。アウトサイドインでは何も変わりません。インサイドアウトで変えて行くしかないのです。目の前の壁を避けることなく一つずつ乗り越えていく事で自分を成長させていくのです。ランディ・バウシュという人がこう言っています。「壁がそこにあるのには理由がある。それは僕の行く手を阻むためにあるのではない。その壁の向こうにある“何か”を自分がどれだけ真剣に望んでいるかを証明するチャンスを与えてくれているのだ」。


チャップリンがインタビューで「あなたの作品の中で、最高傑作は何ですか?」と聞かれた時、彼はこう答えました。「ネクスト・ワン」 
私も「あなたにとって一番良かった年はいつですか?」と聞かれたとしたら、年頭にあたってこう答えたいと思います。「それはこれから始まる1年、つまり今年です。」


皆と一緒に今年を今までで最高の年にしましょう!

2013年(平成25年) 1月7日

株式会社エスピック 代表取締役・島 至