新しいパラダイムを創る

昨年は我が社はある程度順調に成長してきたと思いますが、社会は激動の年だったと思います。 昨年を漢字一文字で表す標語に「災」が選ばれたように、新潟中越地震や記録的な台風の襲来、年末には15万人を超す死者を出したスマトラ沖地震など世界各地で記録的な自然災害が起きました。 社会においても犯罪や自殺、病気やストレスなども相変わらず増加の一途です。 企業環境の面でも以前にはとても潰れるとは思えない大手企業が倒産していくし、20世紀後半をリードしてきた優秀な経営者もたくさん失脚していきました。 身近な所ばかり見ていると気が付かないこともあるかもしれませんが、大きく見れば社会や世界は明らかに変わってきています。 それも急速に激しく変化してきています。この変化に即した新しい生き方や考え方、そして経営の仕方が必要になってきているのではないかと思います。 時代が新しい人の生き方や考え方、新しい社会を要求しているのだと思います。 私は我が社が掲げている理念の「Good People Company」=「人を中心とした企業や社会の構築」はこの時代の要請に合っているのではないかと最近は自信を深めています。 2005年の年頭にあたって、もう一度私の言っている「Good People Company」とはどういう会社なのかということを話しておきたいと思います。


P・F・ドラッカーは社会を支配している力が「武力」から現在は「経済力」そしてこれからは「知力」になるだろうと言っています。 私は「知力」というよりもむしろ「人間力」と云うものが重要になってくるような気がします。 経済力のある人が社会を支配していくのではなく「人徳」のある人がリーダーとなり組織や社会を引っ張っていく。 そしてさらに言うならば人徳も勿論あるが一定の生活を維持していく経済力もあり、一人一人の気持ちも大事にしながら全体をまとめて一定の方向に導いていき、現実を乗り切りながら将来のビジョンを掲げ実現していけるような「人間力」の優れている人が社会のリーダーになっていくと思います。 そういう人が我々のリーダーとなっていくことを多くの人が望んでいるからです。


新しい社会には新しい価値軸が必要です。 資本主義ももう疲弊してきています。 資本主義に代わる新しい社会の形態が必要だと思います。 私はこれからの社会のあり方は「資本主義」から「人本主義」になるべきだと思います。 社会活動や企業活動の基本を経済から人間に主役を移すべきだと思います。 企業活動は「経済活動」というより「人間活動」であるべきです。 「競争社会」から「共生の社会」へ価値軸をシフトしていくべきだと思います。 古い常識や価値を捨てて新しい常識や価値を構築していくことが重要だと思います。 儲けたり勝つことに執着するのではなく、仕事を楽しみ仕事を通じて自分を成長させる。 勝負を楽しみ、勝った人も負けた人も共に何かを得て人間的に成長していこうという考え方や文化を作り上げて行きたいと思います。


宗教においても新しい宗教の形が必要なのではないかと思うのです。 今世界では中東紛争やイラク戦争に代表される根深い対立の要素の一つに「宗教」があります。 一般的に宗教について語ることはタブーとされていますが、私はもっと語ったほうが良いのではないかと思います。 タブー化しているのは自分達の宗教の支配力を強めたいという指導者の意図を感じます。 宗教そのものの教えは人が生きていく上で大変参考になり、生きる力となり光となっていると思います。 宗教がなければこの人間社会はもっと殺伐としたものになっていたかもしれないと思います。 ただそれを伝え、神の教えを説いている我々人間に問題があるのではないかと思います。 歴史的に支配者が「宗教」を人心をコントロールしていくために使ったことも事実だと思います。 「語る」ことによって宗教が教えていることだけでなく「宗教」そのものの人生や社会に対する役割や位置付けの理解を深め、他の宗教との共存を模索していけるのではないかと思います。 そして盲信ぜずに我々一人一人が自分の頭と心で神の教えや神そのものを感じていくことが新しい宗教のあり方として必要なのではないかと思います。


あらゆる分野で今までの常識や概念にとらわれずに何がいいのかを自分で考え模索していきたいと思います。 うまく経営をすることよりいい経営をしていく。 うまく生きるよりいい人生を送っていく生き方をする。 新しい社会を構築していくために、新しい時代を生きていくために今までの古い常識や価値観を捨てて新しい考え方や価値軸、新しい社会にあったパラダイムを構築していく必要があるのだと思います。

幸せに生きていく考え方

幸せに生きていくための考え方というものもあります。 幸せになるための努力なんて必要ありません。 今自分が幸せだと気づくだけで、幸せになることが具体的にいろいろ起こってきます。 人はいろいろ幸せな気分になること、例えば「お金がたくさん入ったり」、「人に愛されたり」すると幸せな状況が生じて幸せな気持ちが起きてきますが、逆に自分は今「お金には困っていない」、「多くの人に愛されている」と意識すると、具体的なお金や愛ももっともっと入ってくるのです。 人はやさしくされるとやさしくしたくなります。 好意を持たれている人にはこちらも好意を感じます。 その逆も然りです。 自分が発信しているものが自分に帰ってきます。 今の仕事を辛い思いでしている人は辛い仕事が増えてくるし、今の仕事を楽しくしている人には楽しい仕事が増えていきます。 その人の考え方や生き方に沿って人も状況も引き寄せられてくるのです。 幸せだと思っている人には幸せなことがどんどん起きてくるのです。

バランス感覚を磨く

上手に生きている人はバランス感覚がいいと思います。 一方の考えや生き方ではなかなかうまくいきません。 自分の意見を主張することも相手の意見をじっくり聞くことも必要です。 堅い信念も柔軟な発想も必要なのです。 現実の今日の売り上げを上げながら明日の企業のビジョンを実現していくのです。 片一方に流れすぎたら他方に力をそそぎバランスをとるのです。 船が目的地にまっすぐ進むためには左右のバランスをとりながら進まないといけないのです。 清流に魚は住めないし、濁りすぎた川にも魚は住めません。 人が居心地良く生きていくには程良い濁りが必要なのです。 堅苦し過ぎずだらしなくもない。 生真面目過ぎずいい加減でもない。 ただこれは中間を意味していることではないし、両面を均衡させていくことでもありません。 人は右足に体重を乗せたら今度は左足に体重を乗せていくことで歩くことが出来、前に進むことが出来るのです。 両足に均等に体重を乗せていたらバランスは安定しますが前には進めません。 オンとオフのバランスのとり方が大事なのです。 仕事に集中したら、ゆっくり休む又は好きな趣味で大いに発散することです。 厳しくもなくやさしくもないのではなくある時は厳しくある時はやさしい、厳しくてやさしい人間になることです。 バランス感覚を磨くということは時と場を読むセンスを磨くということです。 リスクをとって攻めていく時と万が一に備える時を判断するセンスを磨いていくことです。 変えるものと変えないものを判断できるセンスが必要なのです。

自創の人

私はわが社の社員は自創の人になって欲しいと思います。 自創の人とは「自分で考え、自分で決定し、自ら行動して、自分がその結果に責任を持つ」人のことです。 そのために「自主・自立・自由」な文化を育てていこうと思ってやっています。 他人から言われてやったことより、自分で決めて自分から手を上げてやったことは、結果がうまくいこうが失敗しようがそこから何かをより学びます。 そして自分一人より仲間を作りみんなで自分達の思いを実現していったほうが学びもより大きくなります。 我が社にはリーダーと次期リーダーしかいません。 部下を持ってチームを引っ張っていくには、人をマネージメントする以前に少なくとも自分のことはマネージメント出来なければいけません。 自分の気持ち位はいつでも前向きに持っていけるようにコントロール出来なければ、いろいろな人が集まる集団を一つの方向にまとめていくことは出来ません。 リーダーとなれば人に対する勉強は否応なくすることになります。 そういうリーダーとなれる人材をどんどん育てていきたいと思います。 具体的に何を為すかはそれぞれの思いを大事にしていきたいと思います。 一人一人の夢を実現することが会社の夢です。 わが社のポリシーのひとつである「ベストワンよりオンリーワン」という言葉からわかるように一人一人の個性を大事にし、それぞれの持ち味を生かしていきたいと思っています。 ただ個性は無理に持とうとすることはないと思います。 人は自由な環境で素直に生きれば本来個性的なものです。 自由に自分の思いを実現していけば自然に個性がでてきます。 それよりも共通の認識の構築や一体感を作るところに意識を集中するべきだと思います。

次期リーダーを育てる

私は我が社が品格と哲学を持ち、新しい時代をリードして新しい社会に貢献していけるような会社にしていきたいと思っています。 今私のこれからの10年でやる最大の仕事は社長を含めた次期経営陣を育てることだと思っています。 今エスピックにいる社員は全員次期経営陣の候補です。 皆さん一人一人が自分が10年後にエスピックを引っ張っていくリーダーとなるにはこの10年で自分は何をすべきかを考えて一歩一歩実現していってほしいと思います。 そうなるためには自分のことだけではなく、チームにとって何が良いか、会社にとって何が良いかを考えて行動していってほしいと思います。 チームや会社全体を考えて行動していくことは全て自分にはねかえってきますから、一番自分のためになっていきます。


仕事を通じ、人が成長していけるような文化や環境を持った企業を作り、お客様の幸せに貢献し、新しいパラダイムをもって新しい社会の構築を担っていくことが我が社が掲げている「Good People Company」に込められた我が社の目標とする姿です。


私は今年で55歳になります。 今まで好きなことをしてきて、家族、社員、友人に恵まれてとても幸せに生きてきたと思っています。 これからの自分の生き方のキーとして「人のために、一人でも多くの人の幸せに貢献できるように」生きていきたいと思っています。


社員の皆さん、今年もよろしくお願いします。

平成17年1月5日

株式会社エスピック 代表取締役社長・島 至