2024年の年頭所感

皆様、明けましておめでとうございます。

「永続的・複合的な危機の時代」

年明け早々、能登半島で大きな地震が発生し、地震に伴う家屋の崩壊、火事や津波で多くの方が大変辛い思いをする新年のスタートとなりました。また、被災地に物資を輸送しようとしていた海上保安庁の航空機が民間の航空機と衝突するという悲しい事故も起きてしまいました。災害、事故に遭われた方々には、心よりお悔みとお見舞いを申し上げます。
 
毎年のように、あまり良くない出来事が続いています。
ある経済紙では、私達は「パーマクライシス(永続的な危機)」とも「ポリクライシス(複合的な危機)」とも評される時代に行き着いたと表現していました。
 
間もなく2年を迎えようとしているロシア―ウクライナ戦争に加えてパレスチナ自治区ガザでのイスラエルとイスラム組織ハマス間の戦闘も長期化しそうです。世界的なインフレが続いており、選挙イヤーと言われている2024年の各国で行われる選挙の結果次第では、景気後退に向かう局面もでてくるかも知れません。記録的な酷暑や大規模な山火事など気候変動の猛威なども益々、強くなってきています。地政学、経済、地球環境、新型コロナウイルスなどの疫病などのそれぞれの危機が、そろって長期化の様相を呈してきました。しかも複数の危機が共鳴し合い、個々のリスクの総和を上回る惨事に発展しかねない状況が続いています。
 
こういった時代こそ、昨年上映された映画のタイトルように「私達はどう生きるか」が問われてくるのではないかと思います。

「お手本となった日本スポーツ界」

そういった先行きが見えない世界で、お手本として私達を元気づけてくれたのが、スポーツ界での日本チームの活躍だったと思います。WBC(WORLD BASEBALL CLASSIC)で優勝した野球をはじめ、サッカー、ラグビー、バスケットボールがそれぞれ大きな大会で素晴らしい結果を残してくれました。成績に加えて試合後にベンチを綺麗にしたり、相手チームを敬うといった振舞いは中国や韓国からも「我々は日本のチームから学ばなければいけない」と言われたほど、日本チームの姿勢が世界中から評価され、私達日本人の誇りとなりました。
 
個人でも自らの意志で道を拓いている若いヒーローが確実に増えてきていると感じています。大リーグで日本人初のホームラン王に輝いた大谷翔平選手、ボクシングではわずか1年間でスーパーバンタム級4団体を統一した井上尚弥選手、スポーツではありませんが前人未踏の8冠を達成した藤井聡太棋士の活躍もその代表例だと思います。

「コミットメント力と人間性を併せ持ったリーダー」

その中でも私が強くビジネスのお手本としたいと感じているのが大谷選手です。
 
大谷選手には沢山の見習うべき点があるのですが、私は特に二つの点で魅力を感じます。一つは「目標を明確にし、コミットしていく力」です。
以前、大谷選手が高校時代に受けた研修と同じ内容の研修を会社の現管理部メンバーが中心となって受講したことがあります。その研修では大谷選手が実際に高校生の時に書かれた目標設定シートをサンプルとして見せてもらいました。「8球団からドラフト1位を受ける」という目標を立て、その実現のために「体づくり」や、「コントロール」といったものから、「人間性」や「運」といったものまで合計8つの項目に取り組んでいくことが書かれていました。更にそれぞれの項目を実現するために、項目1つに対して取り組むべき8個の行動指針がそれぞれ挙げられていました。さながら会社の中期経営計画や事業戦略の方針や施策のようなとてもしっかりした目標設定でした。大きく成功するためには明確な目標設定とその目標達成のための細かな行動は欠かせないものなのだと強く感じました。日本プロ野球入団後も「二刀流でのメジャーへの挑戦」、更には今回の「大リーグでのホームラン王」に向けても、目標を決めてぶれずに実行している姿勢はとても素晴らしいと感じます。
 
もう一つの魅力は高い人間性だと思います。
大谷選手は道端だろうが、グラウンドだろうが、ベンチだろうが、ゴミがあると必ず拾うそうです。誰が捨てたごみでも関係ないそうです。これは、なかなかできることではありません。
栗山監督が「なんでそんなにゴミを拾えるんだ。」と尋ねたところ、「ゴミを拾っているんじゃないんです。僕は運を拾っているんです。だから、楽しくて仕方ないんです。」と答えたそうです。野球は運の要素も強いようで、運を味方につけるには結局、生きざまを磨くしかなく。いまの努力の仕方で神様や天に認められるか、応援してもらえるか。周囲のために、できることはすべてやり尽くさないと、勝利の女神は振り向いてくれないと栗山監督も話していました。大きな成功を目指すには、目標だけでなく、人間性も磨く必要がありそうです。
 
野球以外の分野においても、高い人間性があって、明確な目標を持っている人が周囲から応援されるシーンが多くあります。
 
私達IT業界でも成功している人たちは専門知識だけでなく、人間性、人格が素晴らしいと感じます。あまりモノや自分を売り込んだりするのではなく、何を売っているかというと信用を売っています。「何かあったらあの人に相談しよう」という信用や信頼を業績に結びつけています。
併せて、そういった人たちが本気で目標を達成したいと思っていると、それを応援する人たちが必ず現れます。それは社内のメンバーだったり、お客様だったり、パートナーの皆様だったり。社会は、人と人との繋がりで出来ています。他人に無関心な人もたくさんいますが、本気で頑張っている人を見ると、どうにかしてそれを応援したいという気持ちになる人が現れます。誰かが本気で目標に向かって努力している姿というのは、それほど人の心を打ち、新たな出会いやご縁に繋がっていき、人がベースとなってイノベーションが起き、結果として、会社の業績も膨らんでいきます。
 
これは、私達が描く競争ではなく共に助け合い、誰もが自分らしく夢や目標に向かって挑戦できる「共生の社会」の一つのモデルだと考えています。
2023年度上期終了時点では多くのチームが高い業績を出し、現在、全社の1/4が社長賞候補となっています。
「目標に対するコミットメント力」や「高い人間性」を持ち、周囲から応援されるリーダーが増えてきたのではないかと考えると大変嬉しく思います。
 

「お客様やビジネスパートナー様との交流がイノベーションの鍵」

第7次中期計画初年度の3/4が経過した時点で、新たな課題も見つかってきました。
 
社内売上は年々、増えている一方、同じくこれまで順調に伸びてきたビジネスパートナー様との協業のほうは2023年度、初めてマイナス成長になる見込みです。
 
新型コロナウイルスも一定程度収束し、社員旅行やリアルでの新人歓迎会、社員総会などのイベントも開催できるようになりました。
社員の交流が活発になったことは年1回調査を行っている健康経営リスクの数値にも反映されています。若手からは上司や同僚からの支援が得られやすくなったという声も聞こえるようになりました。高ストレス者の割合も一桁台へと大幅に改善されています。
社内のほうは、ずいぶんとコロナ禍前の状態に戻ってきたと感じています。
 
一方、お客様やビジネスパートナー様との交流はコロナ禍前の状態にはまだまだ戻ってきていないと感じています。以前は私もお客様やパートナー様と懇親会や、時にはゴルフや釣り、BBQなどでもご一緒する機会がありました。食事したり、遊んで雑談したりする時に、何かお互いに仕事のアイデアが閃き、意気投合して協業に進むことが多々ありました。現在はまだ、そういった交流が出来ていません。全社においても、お客様やビジネスパートナー様とのちょっとした世間話や特に急いでいない将来の仕事の相談をする機会がまだまだ不足している気がします。
第7次中期計画は始まったばかりですが、5年後の高い目標を達成するには、更なるイノベーションを起こしていく必要があります。イノベーションは同じ経験や価値観を持った人達だけとつきあっていてもなかなか起こせません。異なる分野の経験や多様な価値観を持った人同士が結びついた場合にイノベーションは起きます。新型コロナウイルスも一定程度収束してきた今、私達に強く求められているものは一人一人の社交性だと思います。
 
2024年は社内だけでなくFace To Faceでお客様やパートナー様とのリアルな交流を再開して、みんなでコロナ禍前の強い成長軌道に戻していきましょう。
 
皆様、本年もどうぞよろしくお願いします。

2024年1月9日
株式会社エスピック 代表取締役 白川 満貴