混迷の時代を生き抜いていく軸は
2008年のリーマンショックから2年以上が経ちましたが、未だに世界はその不況から脱しきれずに低迷し、経済状況以外にも戦争の脅威やテロの頻発など不安定な社会状況が続いています。日本でも政治の混迷もあり、何処へ向かえばいいのかわからない深刻な閉塞状況に陥っています。こういった不安定で不透明な時代には「どう生きるか」という確固とした、生きていく上での指針が必要だと思います。何があってもこう生きていくのだという人生での軸があれば不透明な時代でも迷わず安心して自分の道を進んで生きていくことが出来ます。私はその軸となるのは当社の企業理念にもあるように「人」だと思います。「人」を大切にしていくことこそが、人生においても仕事や社会生活の上でもこの混迷の時代を生き抜いていく上で、安心してより良くなっていくための軸となるのではないかと思っています。
命を運んでくるのは人
人生はいくら注意していても思いもよらないことが起きたりします。突然交通事故にあったり、病気になったり、自分以外の所でも経済が行き詰ったり、どこかで戦争が起きたりしたら私たちの生活に大きな影響を及ぼします。明日のことは何が起きるのか全くわかりません。この運命といえるものを良くしていくにはどうしたらいいのでしょうか?人生には「宿命」と「運命」があります。宿命は宿っている命(命題=人生で経験しながら学んでいく事)で、どの時代に生まれたか?何処に生まれたか?など生まれながらにして背負っている業のようなもので、変えるのは難しいものです。それに対して運命は運ばれてくる命(命題)で、人生の中での自分の判断や選択で変わっていきます。人生は決まっているようなのですが、ポイントでいろいろ道が分岐していて、その時の判断で選ぶ道によって決まってくるので、その選択によって現れる現象は違ってくるのだと思います。では運ばれてくる命は誰が運んでくるのでしょうか?何によって人生や運命が変わってくるのでしょうか?それは「人」だと思います。だから人を大切にしていくと運が良くなって、ツイてくるようになるのだと思います。人生は良い人との出会いで大きく変わってくると思います。良い人と出会っても自分も良い人に成長していかないと、その出会いが良き友に発展してはいきません。その人に喜ばれたい、その人が嬉しいと自分もすごく嬉しいと思える友を得るために私達は人生を送っているのではないかと思います。人に喜んでもらえた時の喜びは、自分が喜んだ時より何倍も嬉しいものだと思います。この人を「とことん大切にするぞ」と決心することが大切です。そうすると自分も嬉しくなり、だんだん物事もうまく運び、運も良くなってくるのだと思います。
人生を歩むとは良き友人を創るということ
食事をしたり、お酒を飲んだりした時も一人では全然美味しくありません。“誰と”が大事なのです。お酒の一番美味しい飲み方は「人」で飲むのです。それから「雰囲気や料理」そして最後に「酒の味」が来るのです。素敵な人、好きな人と飲んだり食べたりするからすごく美味しいのです。旅行も誰と行くかで楽しさが全然違って来ます。その良き人、好きな人がたくさん出来てきたら人生はすごく素敵で楽しい人生になっていくと思います。人生を歩むとはその良き友人を創るということなのではないかと思います。良き友人とはその人に喜んでもらいたい、その人の笑顔が自分にとってすごく「嬉しい」と感じる人です。我が社のGood People5カ条の2条目に「相手の幸せこそが自分の幸せと感じる人」というのがありますが、まさしくその通りで人は頑張って成功する為に生まれてきたのではなく、人に喜ばれて幸せになっていく為に生まれてきたのだと思います。人は皆夢をもって夢に向かって努力して生きて行こうとしますが、その自分の夢、もっと私の好きな言葉で言うと「志」、その志の高さは自分の努力によって幸せに出来る人の数と質で決まってくるのではないかと思います。
人生で出会える人というのは限られています。特に家族や友人など身近にいる人たちはソウルメイトといって何回も人生を繰り返す中でお互いの魂を磨いていく特別な存在だと言われています。それ程でなくても例えば一緒に食事をしながら親しく話せる人というのは一生のうちで数十人から多くても数百人ぐらいだと思います。この人達は単に偶然出会った人達ではなく、心が魅かれあって出会った運命の人だと思います。だから一生のうちでも数少ない出会えたこの運命の人達をもっともっと大切にしていくことが、自分の人生を素敵なものにしていく重要なキーなのだと思います。
人の尊厳
人を大切にすると言うことは、人としての「尊厳」を大切にすると言うことです。人は人であるだけで冒しがたい尊厳があります。悪いことをした人でも、能力の低い人、弱い人でも、人であるというだけで崇高な存在です。人間は神の分身であるとも言われています。運命や世の中の現象は宇宙の創造主が決めています。その創造主の分身である「人」を大切にしないで、物事がうまくいくはずがありません。Good People5カ条の4条目に「人の尊厳を大切にし、誇り高く生きる」というのがあります。周囲の人達をこころから大切にして、自らは人として誇り高く生きることが大切です。
仕事をしていく上でも長年やっていて蓄積されていくものは、そして最終的に残っているものは技術とか経験とかと言うより人脈だと感じています。ただ人脈というのは自分の役に立つ人間関係を創るというのではありません。逆に人脈を決してビジネスに利用しようとは思わないことが大切です。人脈と言うのは利益の共同体ではありません。お互いの人生での運命の共同体なのです。
全てにありがとう
人を大切に思っていると、いかに自分が多くの人に支えられながら生きているのかということがわかります。「出来るだけ人に迷惑をかけずに生きていく」というのはいいようでちょっと方向がずれています。「どれだけ皆に迷惑をかけながら生きているか」ということに気づくことが大事です。それに気づくと感謝の気持ちが湧いてきます。「ありがとう」という言葉には実に奥深いものがあると思います。「ありがとう」と言い続けているだけで、病気も快方に向かい、最近増えている鬱病も治っていくそうです。健康で病気にもならなくなり、多くの人からも愛されていくし、人間関係が良くなるから仕事もうまくいくようになり、運命が良くなっていきます。
感謝にも初級、中級、上級というのがあるそうです。何か親切にされたり、嬉しいことをしてもらったりしたときに感謝するのが初級です。普段の何でもないことに感謝するのが中級です。今年1年大きな事故にもあわず、大きな病気にもならなかったこと、お腹一杯食べられること、目が見える、耳が聞こえること、それらが無くなった時のことを考えれば感謝してもしつくされないほど幸せな状態にあると言えます。それがわからないと今が幸せなんだよと分からせるために、いろいろな災難や困難が起きてきます。病気になって健康のありがたさをわからせるようになったり、愛する人に文句を言ったり、求めてばかりいたりすると別れることになり、その人の存在の大きさを気づかせたりするようなことが起きてきます。自分のこころを磨き高めるために、いろいろなテストとしての現象が現れるようです。上級というのは辛いことや悲しいこと、嫌なことがあってもそれに感謝することです。それらが自分のこころを磨き成長させてくれるということが分かっているからです。上級レベルになればもう嫌だとか、辛いとか感じないわけですから、これはもう人生が楽しくて素晴らしくなっていくわけです。そしてそのテストに通過してきたわけですから、もうテストをする必要がなくなり、辛いことや大変なこともあまり起きてこなくなって、楽しいこと嬉しいことばかりが起きてくるようになるのです。
この不況や不安定な社会状況も私達を磨いていくためのテストなのだと思います。ここを乗り越えて、自分を磨き、企業を磨き、更なる成長をしていきたいと思っています。
ホスピタリティ
我が社では一昨年あたりから受注力の強化ということで、営業研修を受けたり、営業戦略会議を立ち上げたりして、技術偏重になりがちなSEから需要創造型のSEへと我が社の技術者も変わってきていると思います。この1〜2年で個人としても企業としてもかなり力を付けてきていると思います。結果というのはすぐには出てきません。努力したあと(サボってもそうですが)ちょっと遅れてから結果は出てくるのです。去年の皆さんの努力の成果は今年から来年にかけて出てくると確信しています。
営業におけるキーとなるのは何だろうかと考えました。各業界のトップセールスマンの話を聞いていると、それは「ホスピタリティ」ではないかと思いました。
こんな話があります。あるコピー機の販売をしている会社に新人が入ってきました。彼が始めてコピー機を収めに休日にお客様のところに行きました。無事コピー機を設置し、ふと眺めると、隣にあるコピー機がやけに汚れていて不釣合いでした。そこで彼はその古いコピー機を一生懸命磨いたのです。これでバランスが取れたかなと思って、もう一度眺めて見ると今度は床が汚くて気になりました。そこで床も綺麗に掃除しました。そうすると今度は窓ガラスの汚れが気になって窓ガラスも磨きました。これでいい感じになったと思ってようやく帰途に着きました。月曜日にお客様から会社に電話が掛かってきて「誰がコピー機を設置したのか?」と上司に連絡が入りました。○○君だと答えると別の部署でもコピー機が必要なので是非彼にお願いしたいと言う話でした。指名が入るとその人の成績になります。その会社の人が感動して、とても素敵な話があると色々な所でそのエピソードを話すので、次々と依頼が来て、入社3ヶ月目には彼は数百人いる営業マンの中でトップの成績を上げるようになりました。
自動車のトップセールスマンの話でも生命保険のトップセールスレディの話でも、共通しているところがあります。お客様の生年月日から家族構成、趣味などお客様の情報はどんな小さな情報も控えていて、どうしたらお客様が喜んでもらえるかを常に考え、お客さまからの要望にはどんなことでも答えようという姿勢があります。だから営業には出かけなくても、事務所にいるだけでお客様からどんどん注文が入ってくるのです。
前に朝礼で話した4本の冷えたビールの話もそうです。ある住宅街にA店とB店の2店の酒屋があります。A店の方が店構えも大きく立地も良いのですが、ビールの出荷数量はB店のほうが圧倒的に多いのです。ビール会社の人が、何が違うのかとお店に行って様子を見ていると、夕方ビール1ケースの注文が入ると、A店の方は倉庫からビールケースを出してそのまま届けるのに対し、B店のほうはその内の4本だけをケースから抜いて、冷蔵庫から冷えた4本のビールを入れて届けていました。夕方のビールの注文は、ご主人の帰宅に合わせ、夕食の支度をしている時、冷蔵庫にビールが切れていたことに気付いて注文してくる場合が多いので、ビールが届いてから冷やしたのでは遅いので4本だけ冷えたビールを入れ換えておくのだそうです。よく見ているとそういう気配りがビールだけでなく随所にされていて、それが売上の増大という結果に跳ね返ってきているのだそうです。
トップセールスマンの話や繁盛店の様子からは営業力のキーとなるのはお客様へのホスピタリティなのではないかと思うのです。もっと言えば自然なホスピタリティとはその人の人格なのではないかと思います。営業力の強化とはつまるところ人格を磨いていくということになるのではないかと思います。
人格を磨くということ
人生でも人間関係や仕事でも、それらを良くしていくのは、結局は人格なのではないかと思います。人格を磨くと言ってもそれ程難しく考える必要はありません。人格を磨くということは、日常生活の中で「何があってもイライラしない、いつも笑顔でいられるか?」ということだと思います。人格を磨くとは自分の心を広げる、全てを受け入られる心を創るということだと思います。「人生の最大の不幸は不機嫌である」とゲーテも言っています。
これから第4四半期が始まります。会社としてもこの不況の中で今年、来年あたりが勝負所です。自分を磨くこと、自分の人生のステージを高めていく事とは自分がやりたい事をやるというより、自分がやるべき事をやることだと思います。やりたい事とはやるべき事の先に設定されてくるのだと思うのです。自分がやるべき事というのは今ここにある事です。今ここにある事が天から与えられた自分の使命なのだと思います。それを全身全霊でこなしていくことによって次のステージが用意されてきます。そうしていくことによって自分のやりたいことが実現されてくるのです。やるべき事をやっている人だけがやりたい事が出来るようになるのです。
第4四半期は忙しくなるかも知れませんが、もともとbusinessとはbusyの名詞形なのです。しっかり結果を残しながらGood People Companyを目指して一歩一歩前進していきましょう。
2011年(平成23年) 1月5日
株式会社エスピック 代表取締役社長・島 至