2014年の年頭所感

One World

昨年は国内ではアベノミクスで景気が上向いたり、2020年の東京オリンピックが決定したりといいニュースもありましたが、世界をみると相変わらずテロが頻発し、タイでの暴動やイスラム圏での民族対立など世界全体ではますます対立と憎悪が広がっているように思えます。中国の防空識別圏の拡大や安倍首相の靖国神社参拝などで、日中、日韓の関係はさらに悪化し、ほとんど冷戦状態のようになっています。北朝鮮の現状などを見ても、今、世界も日本も一触即発の危険な状態にあると思います。今ほど我が社が目指している「共生の社会」の理念が必要となっている時代はないと思います。自分の立っている位置が違えば正義も物事の見え方も変わってくるのは当然です。両方を見渡すもうひとつ上の視点から見る、俯瞰的な視点が必要だと思います。その視点から現実的な対応を考えることが必要です。相手を大切にしよう、共生していこうと思って、相手の言うことばかりを聞いていても、現実は相手が更に図に乗って要求をエスカレートさせてくることもあります。不条理なことに対しては毅然とした態度を示すことも必要な時もあります。対立する時にはどちらにも言い分があります。こちらの言い分が正しいといくら説得しても、強く主張するほど対立は逆にエスカレートしていきます。日本にとって何がいいかではなく、世界にとって何がいいかを考えなければなりません。私達は日本人や中国人、韓国人の前に世界人なのですから。大切なのはOne World (一つの世界)の視点をしっかり持って、現実の問題に対応していくことです。現実的な対応にはこれが正解というのはなかなかありません。よりベターな道を探り、少しずつ築いていくしかありません。大切なのは共生していこうという確固たる意思を持ち続けることだと思います。

競争と協調

「競争」と「協調」は組織論の中でもよく研究されているテーマではありますが、ある研究機関がこのテーマについて実験をしました。ある課題を2つのチームに与えて、Aチームはチームの業績を個人の成績に応じて案分して成果配分しました。Bチームではチームの業績を個人の成績に関係なく全員で均等に配分しました。結果はBチームの成績の方が良かったのです。やはり個人の為に頑張るより皆の為に頑張った方がパワーが出るし、結果も良くなるようです。

妬みが紛争の大きな要因

私は旅行が趣味で、その中でもアフリカはとても印象に残っているところで、今までに4回ほど旅をしました。40年ほど前に妻と東アフリカから北アフリカにかけてヒッチハイクや野宿をしながら7カ月ほど旅をしました。その時は大きな都市はほとんど黒人街と白人街に分かれていました。勿論私達は貧乏旅行でしたので、黒人街の安ホテルに泊まっていました。人々は貧しくて、街は汚く食事も粗末でしたが、皆とても優しく親切で、とびきりの笑顔でとても幸せそうだったのが印象に残っています。数年前に同じ街に行ったのですが、街の様子はすっかり変わり、ガイドさんからホテルを出ないようにと注意があるほど治安が悪い状況になっていました。差別がなくなり、黒人の人達もスーツを着て一流ホテルにたくさん見かけるようになったのですが、昔の黒人街のあたりはスラム化し、人々の眼つきも悪くなっていました。国は豊かになったのですが、貧富が拡大し、妬みや憎悪が拡大してきたのだと思います。今、世界でもテロや紛争が絶え間なくあり、宗教や民族の対立がその要因のように言われていますが、私は根底にはこの貧富の差による妬みが紛争の大きな要因ではないかと思っています。中国でもGDP世界2位と経済成長が著しいですが、格差が増大し、国内のデモや紛争は増大し、1昨年の国内の治安維持費用は11兆円と国防費を上回っています。

比べない

精神分析の祖、フロイトは1939年に亡くなったのですが、彼がこんなことを言っています。「幸・不幸を論じる人は我々の時代以前にはほとんどいなかった。昔は通信や放送が未発達で他人の生活を知ることが出来なかった。通信が発達したために、他の人がどのように生活しているのかが分かり始め“比べる”ことが当たり前になった。その結果、幸・不幸という認識が広がった。他人と“比べる”ことが不幸の源かもしれない」。


私達が幸せに生きて行くには「比べない」ことが大事なのではないかと思います。勿論私達はすぐには達観できないので、どうしても比べたりして落ち込みそうな時は、下を見て、日本に生まれただけで幸せ、毎日食べられるだけで幸せと、自分を納得させることで乗り切っていくことがいいのではないかと思います。

鳴かぬなら鳴かなくていいホトトギス

よくある話に「コップに水が半分しか入っていない」のか「コップに水が半分も入っている」のか、という話があります。自分の受け取り方、自分の意識で変わるのです。幸も不幸もそうです。同じ状況でも自分の捉え方で変わるのです。この世で起きている現象や今の状況に問題があるわけではありません。それをどう捉えるかという認識の問題があるだけです。自分の受け取り方で良いことや嫌な事、楽しいことや辛い事などいろいろなことが起きているのです。自分の思う通りにならないからいろいろな悩みや問題が発生するのです。人と人との関係で大切な事は相手に何も求めない、相手を変えようとしない事です。自分が変わればいいのです。でも「自分が変わると相手が変わる」と言うのも、心の底では相手を変えようとしています。相手は変わらなくていいのです。「鳴かぬなら鳴くまで待とうホトトギス」ではなく「鳴かぬなら鳴かなくていいホトトギス」でいいのです。人生で問題にすべきは自分のことだけです。自分の意識、自分の行動、自分の生き方をより良くしていくだけで自分を取り巻く世界が変わっていきます。どんな環境、どんな状況でも自分の捉え方次第で成長できるし、幸せになれます。逆に厳しい環境ほど成長できるものです。いい環境やいい状況を求めず、いい自分を求めるのです。いい会社、いい仕事、いいチームを選ぶことより、いい社員になった方が成功するのです。

ありがとうの商品

英知を結集して同じような他の商品より品質・価格どれをとってもずっと優れているのに売れない商品というのがあります。反対に技術や能力はさほど優れてはいないのに売れる商品というのがあります。もの作りに関してその商品が「売れる・売れない」というのはどうも技術や能力によるものではないようです。売れる商品というのはそれに関わった人達の喜びと感謝が籠っている商品のようです。そのオーラが商品に宿っていて、それを買う人達が感じるようです。私達が扱っているコンピューターのソフトウエアーなどはもっと顕著に現れると思います。お客様のことをどれだけ思って作っているかでシステムにその思いが現れてくると思います。一生懸命頑張るし努力もしているけど、それは自我の為で、周囲に感謝をしていない人というのは意外と社会に多いものです。その思いが作った商品やシステムに込められてしまうのです。努力をすることよりも喜びと感謝の気持ちで仕事をすることの方が大切です。そういう気持ちで仕事をしていると楽しいですから、実は一生懸命努力して仕事をしている人より、実際にはもっと仕事をしていたりします。


ある村では車は全てM社の車が入っていました。調べてみるとその村では全てある人から買っていました。住人に聞くと「あの人がM社の車を勧めればM社の車を買い、N社の車を勧めればN社の車を買います。それは何かがあれば彼に電話をすればすぐに飛んできて、親身にどんな問題にも対応してくれるし、真夜中でも事故があった時は駆けつけて対応してくれる。その安心感を買っている」とのことでした。彼に聞くと「自分は車に関してはあまり詳しくなくて、いかに売ろうとかは考えたことはない。ただ皆さんにいかに喜んでもらえるか?いかに役に立てるか?をいつも考えている」と答えたそうです。「真夜中に電話が掛ってきたりしたら大変でしょう?」と聞くと「いつでもそういう気持ちでいますが、実際に真夜中に電話が掛って来るようなことは1年に1回か2回ぐらいです」とのことでした。


どうやら成果を出すには才能を磨くことや努力すること以上に感謝をすることの方が大切なようです。

まずは素直に真似てみる

「お金儲けをしたい」と強く思うほどお金が入らない。「愛されたい」と強く思うほど愛されない。自我が成果や成功を妨げるのです。自我が悪いと言うより、お金を儲けたい、成功したいと思うなら、どうしたらそうなるかを素直に学べばいいのです。自分が儲けたければ相手を儲けさせればいいのです。愛されたいなら愛せばいいのです。宇宙には原理・原則があります。それを理解し、それに沿っていけば人生はうまくいくようになっています。人生で成功するにはそれなりの理由があります。その理由を掴み、成功していく為の最短距離は成功している人から学べばいいのです。尊敬している人から学べばいいのです。まずはただ真似てみればいいのですが、自我の強い人はそのまま受け入れたくないのです。受け入れるにしても、それを自分流に変えて取り込もうとします。でもうまくいかない人はその自分流がおかしいからなのです。ゴルフでもテニスでも初心者はまずコーチのいう通りにやってみることがうまくなる近道です。習字のお師匠さんの言葉がありました。「お手本を真似て、真似て、それでもどうしても真似の出来ない所が出てきたら、それがあなたの“個性”というものです」。

我が社の未来

昨年末の「未来会」で我が社の未来像が発表されました。若手の皆さんの代表の人達が半年かけて描いた我が社の未来像です。そこで発表された我が社の未来の事業の在り方、社会の在り方、人の在り方をしっかりと腹に落として、そこに向けて1歩1歩、歩いていきましょう。我が社の未来のイメージとして放映されたムービーで、SPICの半沢直樹の決め台詞「やられてもやりかえさない! それが共生の社会だ!! 」というシーンは強く印象に残っています。そして20年後の1500人の社員と500億の売り上げの目標も発表されました。それを実現していくのは皆さんです。我が社の理念である「Good People」に一人ひとりがなって、我が社のビジョン「共生の社会」を目指していけば、おのずと達成されていくでしょう。「いい会社」を目指して皆が一丸となってやっていけば、一人ひとりの人生も充実し、会社も自然に大きな会社となっていくでしょう。


人は上を目指している時は迷いません。頂上はどの道から登っても辿り着きます。道に迷うのは横道に逸れたり、下りの時だけです。


今年も目標に向かい、夢に向かい、力強く又一歩登って行きましょう

2014年(平成26年) 1月6日

株式会社エスピック 代表取締役・島 至